唇のあれやすさは細胞間脂質の密度の低さにあることを発見 唇あれを改善するリポソーム製剤を開発 PDF:622KB

唇のあれやすさは細胞間脂質の密度の低さにあることを発見
唇あれを改善するリポソーム製剤を開発
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唇のあれやすさは細胞間脂質の密度の低さにあることを発見
唇あれを改善するリポソーム製剤を開発
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唇あれを改善するリポソーム製剤を開発
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研究開発
唇のあれやすさは細胞間脂質の密度の低さにあることを発見 唇あれを改善するリポソーム製剤を開発
2024.07.23
リリース全文 [ PDF / 613KB ]
株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役:小林 一俊)は、唇のあれやすさの一因はバリア機能を担う細胞間脂質の密度の低さにあることを発見しました。唇の細胞間脂質の密度は肌よりも低いことも明らかとなり、その点が肌よりも唇があれやすい要因であるともいえます。また、リポソーム製剤をあれた唇に連用することで、その外観やあれ状態が改善することを確認しました。
図1 唇の水分量と細胞間脂質の構造の関係(構造は電子線回折から解析)
研究の背景
唇は人の印象を決める上で重要な部位であり、美しく血色感のある唇は健康的な印象を与えます。しかし、ひび割れ、皮剥けといった唇あれに悩む人は多く、唇の乾燥を慢性的に感じている人も珍しくありません。これらの唇のあれや乾燥に対し、リップクリームなどでの保湿は有効な手段ですが、それでも慢性的な唇の不調を抱える人もいます。
ここで唇の構造に注目すると、皮脂腺や汗腺がない、角層が薄い、ということが知られています。これらは表面を保護する皮脂や汗が出てこない、バリア機能として重要な角層が少ないという点で、水分量が少ない、水分蒸散量が多いといった唇の乾燥しやすい性質をある程度説明しています。一方で慢性的な唇の悩みを解消するためには、さらに別角度からのアプローチが必要だと考えました。
そこで本研究では唇のあれやすさを解明することを目指し、バリア機能として重要な角層の細胞間脂質の構造に着目して研究を行いました。また、唇あれへのアプローチになりうる製剤の開発を検討しました。
唇は肌よりも細胞間脂質の密度が低く、あれやすさにも繋がることを発見
角層の細胞間脂質はセラミドや遊離脂肪酸といった成分で満たされた充填構造をしており、その密度が十分でないとバリア機能が低下することが知られていました。そこでこの細胞間脂質の充填構造の密度を唇と肌で比較検討しました。電子線回折という細かな充填構造を解析する手法と、赤外分光法を用いた充填密度の測定による検証を重ねた結果、唇は肌よりも細胞間脂質の密度が低いことが分かりました(図2)。そのため、唇は肌よりもバリア機能が低く、内部の水分が蒸散しやすい、外部から刺激物が侵入しやすいといった、唇のあれやすさに繋がる新たな知見を得ることができました。
図2 赤外分光法による唇と肌の細胞間脂質の密度の比較
さらに、唇のあれ状態と細胞間脂質の充填構造の関連を評価するため、目視による唇あれと水分量の低さが相関している唇を対象に、電子線回折による充填構造の解析を行いました。その結果、水分量が少なくあれた唇では充填構造の密度が低く、バリア機能も低い流動相という構造が多く、一方でバリア機能が高い結晶構造が少ないことが明らかになりました(図1)。このことから、唇あれを改善するためには細胞間脂質の充填構造の密度を高めることが重要であることが分かりました。
リポソーム製剤による唇あれ改善効果の検証
次に、唇あれの改善のための製剤開発を行いました。今回の発見から、唇の細胞間脂質の充填構造の密度を高める必要があることが分かったため、肌において細胞間脂質のバリア機能の改善効果が確認されているリポソームを含んだリップケア製剤を開発しました。
唇あれのある30名に開発品を4週間連用してもらい、連用前後の唇の外観、水分量、水分蒸散量からあれ状態への影響を評価しました。その結果、外観の改善、水分量の増加、水分蒸散量の低減といった唇あれの改善効果を確認することができました。また、特に改善効果の高かった実験参加者の唇の細胞間脂質の充填構造の解析を行ったところ、連用前後で高密度な部分が明らかに増加しており、今回開発したリポソーム製剤による細胞間脂質への改善効果が示唆されました(図3)。
図3 リポソーム製剤の唇あれに対する効果検証の一例 (外観および赤外分光法による解析)
今後の展望
本研究により、唇があれやすい原因の1つは唇の細胞間脂質の充填構造の低さにあることが明らかになりました。また、リポソーム製剤を用いることで、唇あれを改善することができることを確認できました。この成果は今後の商品開発に応用するとともに、今後も肌のみに留まらない基盤研究や効果のある製剤開発を推進していきます。
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