星野真里の“いろどり日記”「Like an adult」
24.09.02いろどり日記
もう迷わない。
と、なるはずの「不惑」という人生のステージにおいて、昨日も今日も迷ってばかりいる。
着るもの、食べるもの、マスカラの色、髪型…
忙しい朝の時間を効率よく使うために準備していても、
その日の気温や湿度、些細な感覚の変化ですぐに決心はゆらいでしまう。
せめて肌だけは。
深呼吸とともにぬるま湯でゆったりと肌を洗い流す。
タオルでやさしく水分をふき取った後のすっきりした顔が、自分だけが知る自分の一番好きな顔だったりする。
今年も無事にひとつ、年を重ねることができた。
年齢を気にしているわけではないけれど、気にしていないと忘れてしまい、うっかりサバを読んでしまうことがある。
それはそれで少し恥ずかしい。
そんな理由で「いま、私は○○歳である」ときちんと認識するようにしている。
年齢は一つのバロメーター。
誕生から数えて何年生きてきたか。
その単純で平等なものさしの便利さに、最近気がついた。
落ち込むためではなく、頑張るために。
もう誰も示してはくれない目標を、自由に決めるためのものさし、それが年齢なのだ。
photo by mari hoshino
しかし気をつけなくてはいけないのは、あくまで自分自身に使うことである。
そのフィルターを通して他人を判断しないこと。
単純なものさしでは測れないほど、人は複雑な生き物なのだから。
ありがたいことに、今では年代ごとに様々な情報がまとめられているサイトがたくさんある。
20代、30代、40代、50代…
おススメの美容法、髪型、運動の仕方、食事のとり方などなど。
もちろん全てが正しいわけではない。
膨大な情報の中から自分にとって必要な要素だけを取り出すことが大切。
これこそ、大人のたしなみ、なのではないかと思っている。
世の中に数限りなく存在している先人たちの知恵を解釈し、正しい使い方を心得ていること。
ふと、疑問が浮かび上がってきた。
十年、二十年前に、40代や50代、さらにそれよりも先輩に向けて、美の情報はこれほどまでに開示されていただろうか。いつまでもきれいでいたい、健康でいたいという思いを言葉にし、形にしてくれた多くの人々が作り上げた道の上に私たちは立っているのだということに、あらためて感謝の念を抱いた。
子どもの頃、まだなりたくないと思っていた「大人」となった私が、今できることは何なのだろう。
9歳になった娘に、大人になりたいか訊ねてみた。
「なりたくない」と即答された。
そういいつつ彼女はすでにメイクに興味があり、休日にはアイメイクを楽しんでいる。
「今日は大人っぽいね」などと声をかけると嬉しそうだ。
「大人」と「大人っぽさ」の間にはきっと何かがあるのだろう。
それを川にたとえるなら、すでに渡ってしまった私にはもうその川の水温や流れの強さを伝えることはできない。
けれど「大人」側の体感や、「大人」側からみることのできる「大人っぽさ」に憧れる
世代の美しさを伝えることはできるはず。
お互いにないものを補い、良いものを褒めたたえながら共生してゆけたらと思う。
photo by mari hoshino
少し大人ぶって語ってみたものの、正直、まだ自分にとっての「大人」をつかみきれていない私がいる。
そんな私だが娘が大人になることをとても楽しみにしている。
「大人になったら一緒にお酒を飲んで酔っ払いになろうね」
ときどきそんなお願いをしている。
大人になった彼女に大人のたしなみを教えられるよう、これからも私自身大人のたしなみを身につけてゆかねば。
冬に向けて澄んでゆく夜空をおつまみにくいっと一杯。
これぞ大人。
いいね、大人。
それでは最後にほろ酔い短歌をどうぞお召し上がりください。
曇天の夜空にわたしだけの月描いてみせるおちょこ一杯
photo by mari hoshino
星野真里
女優・タレント。1981年7月27日生まれ,埼玉県出身。O型。1995年にNHKドラマ『春よ、来い』でデビュー。同年にTBS系ドラマ『3年B組金八先生』に坂本乙女役で出演し、認知度を高めた。
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